図面をスキャン・電子化する場合と、ドキュメント(文書)をスキャン・電子化する場合とでは作業手順や注意点が異なるほか、使用するスキャナも異なります。これには単に大判スキャナと小型スキャナであるかどうかの差だけではなく、決定的な用途の違いがあります。
ここでは図面とドキュメントをスキャン・電子化する際に使用するスキャナの選定方法についてご説明します。
1. 図面スキャンに適したスキャナ
- 一般的なスキャナタイプ:大判シートフィードスキャナ(A0/A1対応)
項目 | 内容 |
対応サイズ | A1~A0 長尺図面(幅841mm以上) |
搬送方式 | シートフィード式(図面を巻き込んで連続搬送) |
解像度 | 300~600dpi(詳細図面用途では600dpi推奨) |
カラーモード | モノクロ/グレースケール/フルカラー |
保存形式 | TIFF/PDF(非圧縮・高精細)/JPEG(軽量化用) |
特徴的な機能
- 青焼き図面や色付き線図を正確に補正する「色補正機能」
- 傾き自動補正(図面の水平や垂直を細かく補正する)
- 長尺(例:A0×数m)の連続スキャン対応
- 高速処理(5〜10秒/A1)
2. 文書に適したスキャナ
- 一般的なスキャナタイプ:ADF付きドキュメントスキャナ(A4/A3対応)
項目 | 内容 |
対応サイズ | A4〜A3(業務書類サイズ) |
搬送方式 | ADF(自動原稿送り装置)による高速連続搬送 |
解像度 | 通常200~300dpi(OCR処理に十分) |
カラーモード | モノクロ/グレースケール/カラー |
保存形式 | OCR付きPDF、検索可能PDF、TIFFなど |
特徴的な機能
- 両面同時スキャン(両面原稿対応)
- 白紙スキップ、斜行補正、原稿サイズ混在対応
- OCRソフトウェア付属(文字認識付きPDF出力)
- 仕分け、バーコード自動振り分けなど
3. 違いを簡単にまとめると
比較項目 | 図面スキャナ | 文書スキャナ |
対象 | A1・A0図面などの大判原稿 | 契約書・稟議書・帳票などA4中心の業務文書 |
搬送方式 | シートフィードまたはフラットベッド | ADF(自動原稿送り装置) |
解像度 | 高精細(300〜600dpi) | 標準精度(200〜300dpi) |
処理内容 | 線の補正、青焼き補正など重視 | 文字のOCR処理、ファイル仕分けなど重視 |
特徴 | 高画質・広幅・長尺対応 | 高速・自動・文字認識対応 |
主な利用業種 | 建設・土木・製造・設備業 | 官公庁・学校・医療・民間事務系全般 |
補足アドバイス
- 図面と文書の両方を扱う現場では、2種のスキャナを使い分けるのが理想です。
- 大判図面は設備投資が高額なため、専門業者への委託がお勧めです。
- ドキュメントスキャナは比較的安価な機種もあり、一般的な複合機でも代用可能です。
4. 原稿の用途や性質の違いによる決定的なスキャン機能の差
図面には正確性と精度が求められる
- 図面には縮尺があり、縦横の長さや線の太さに至るまで精度が求められます。
- 図面には細かい数値や文字の記載があり、判読可能な正確性が求められます。
- 図面は比較的にサイズが大きく、スキャン時に画像が歪むリスクが高まります。※
以上の理由により、図面のスキャナには歪みが少なく、焦点深度の高い高精度の大判スキャナが推奨されます。

ドキュメントには可読性とスピードが求められる
- ドキュメントには文字や写真が混在する為、可読出来る鮮明さが求められます。
- ドキュメントは文書資料として検索性が求められます。
- ドキュメントは比較的に大量である為、高いスキャンスピードが求められます。
以上の理由により、ドキュメントスキャナにはADF(自動原稿送り装置)やOCR機能のある高速スキャナが推奨されます。

※「歪み」とはスキャンする際にレンズ自体の曲面によって画像に歪みが生じる現象を指します。スキ ャナには予めこれを補正する機能があり、図面専用のスキャナにはより高精度の補正機能が備わっています。また焦点深度とは、ピントが合う範囲の広さを指しており、これが浅いと画像がぼけて精度の低い画像になってしまう為、図面スキャナには不向きと言えます。一般的に図面スキャナは焦点深度が深く、スキャン速度が遅いのが特徴で、ドキュメントスキャナは焦点深度が浅く、スキャン速度が速いのが特徴です。
用途に合わせて正しいスキャナ機器を選びましょう。
図面やドキュメントのスキャン・電子化でお困りの際にはお気軽にお問合せ下さい。