300dpiと600dpi ― スキャン解像度で変わる活用の幅
●標準解像度300dpiの強み
300dpiは、最も一般的に利用されるスキャン解像度です。
契約書や請求書、書籍などの文書を電子化する際に多く用いられ、文字の視認性は十分で印刷にも対応できます。
特に大量の資料を扱う場合には、データ容量が比較的小さく処理速度も速いため、保存や共有の効率性に優れています。
例えばA4サイズのカラーページなら2〜3MB程度に収まることが多く、クラウド保存やメール送信にも負担が少ない点が魅力です。
日常業務においてペーパーレス化を進めるなら、300dpiはバランスの取れた選択肢といえるでしょう。

●高精細600dpiの価値
600dpiは、資料の細部を正確に残したいときに選ばれる解像度です。
図面の細い線、写真の階調、古文書のかすれた文字など、300dpiでは再現しきれない部分も鮮明に読み取れます。
高精細なスキャンデータは拡大表示しても線や文字が崩れにくく、研究資料やアーカイブ保存にも適しています。
美術作品や古地図といった文化財のデジタル保存では、
600dpiの再現性が資料価値を高める役割を果たします。
データ容量は大きくなりますが、後世に残すための信頼性を考えれば、その投資は十分に意味のあるものといえるでしょう。

●データ容量と効率のバランス
解像度が高くなるほど、ファイル容量も比例して増えていきます。
A4サイズのカラーページを例にすると、300dpiでは2〜3MB程度ですが、600dpiでは5〜6MB以上になることがあります。
数百ページをスキャンすれば差は数GBに広がり、保存先のストレージやデータ転送に大きな負担をかけます。
業務で扱う資料は量も多いため、効率性と精細さのどちらを優先するかを明確にしなければなりません。
用途や目的に応じて解像度の基準を事前に設定しておくことで、無駄な再作業を避け、運用全体のスムーズさを確保できます。

● 再スキャンできないリスク
スキャン解像度は取り込み時に決まるため、後から引き上げることはできません。
低解像度で取り込んだデータを、高精細に変換することは不可能なのです。
そのため、将来的に活用する可能性がある資料や、価値の高い原稿は、初めから600dpiで取り込んでおく方が安心です。
一方、600dpiで取り込んだデータを縮小することは簡単に行えるため、用途に合わせて使い分けられるメリットがあります。
特に再スキャンが難しい古文書や図面は「最初の選択」が品質を左右します。
後悔しないためには、保存性を意識した判断が欠かせません。

●シーン別おすすめ解像度
解像度は資料の種類や目的によって適切に使い分ける必要があります。
契約書や日常業務の文書であれば、300dpiで十分に実用的です。
建築図面や設計資料は600dpiで細部を正確に残すべきですし、写真や美術資料も600dpiで取り込むことで色味や質感を忠実に再現できます。
一方で、バックオフィスの大量書類処理では300dpiを選ぶ方が効率的です。
組織内で「どの資料を何dpiで残すか」という基準を明確にしておくと、品質と効率の両立が可能になり、電子化全体の質が向上します。
