図面の電子化を検討するとき、「スキャンにいくらかかるのか」という費用だけに注目してしまいがちです。
しかし、図面電子化の効果を判断するには、電子化にかかる費用と、電子化によって削減できるコストや業務時間を比較することが重要です。
特に大量の図面を保管している企業では、保管スペースや図面を探す時間など、紙の状態では見えにくいコストが発生しています。
ここでは、図面電子化のROI(投資対効果)を考える際のポイントを紹介します。

ROIとは?
ROIとは「Return on Investment」の略で、投資した費用に対して、どれだけの効果が得られたかを表す指標です。
図面電子化の場合は、例えば次のように考えます。
電子化によって得られる効果 − 電子化にかかった費用
あるいは、より具体的に、
ROI =(電子化による効果額 − 電子化費用)÷ 電子化費用 × 100
という形で考えることができます。
ただし、図面電子化による効果は、単純な金額だけでは評価しにくい部分もあります。
そのため、まずは「どのようなコストや時間が減るのか」を整理することが大切です。
1.図面の保管費を考える
紙図面を大量に保管している場合、書庫や倉庫などの保管スペースが必要になります。
例えば、
- 書庫・倉庫の賃料
- 保管ラックやキャビネット
- ファイル・収納用品
- 保管場所の整理・維持にかかる費用
などです。
図面を電子化して紙原稿の保管量を減らせれば、こうしたコストを削減できる可能性があります。
特に、図面のために専用の保管スペースを確保している企業では、1年間の保管費用を算出してみると電子化の効果を把握しやすくなります。
2.図面を探す時間を金額に換算する
図面電子化の効果を考えるうえで、見落としやすいのが「検索時間」です。
紙図面の場合、
「図面を探す」
↓
「書庫へ移動する」
↓
「ファイルを確認する」
↓
「目的の図面を取り出す」
という作業が必要になることがあります。
1回あたりの時間が短くても、これを何度も繰り返せば大きな業務時間になります。
例えば、1回の検索に15分かかり、月に20回発生しているとします。
15分 × 20回 = 300分
つまり、月5時間です。
担当者の人件費を仮に1時間3,000円として計算すると、年間では、
5時間 × 3,000円 × 12か月 = 180,000円
となります。
実際の効果は企業によって異なりますが、このように「図面を探す時間」を金額に置き換えることで、電子化の効果を具体的に考えられます。
3.図面を共有する時間も考える
紙図面では、必要な図面をコピーしたり、担当者へ渡したりする作業が発生する場合があります。
電子化された図面であれば、社内の適切な共有環境から必要なデータを確認できます。
例えば、
- 担当者への図面送付
- コピー・出力
- 図面を探して手渡す作業
- 遠隔地への資料送付
などの時間を削減できる可能性があります。
特に複数の部署や拠点で同じ図面を利用している企業では、電子化による共有の効果が大きくなる場合があります。
4.図面の紛失・劣化によるリスクも考える
紙図面は、長期間保管することで、折れ、破れ、汚れ、変色などが発生することがあります。
また、必要な図面が見つからない、別の場所へ移動されているといった管理上の問題が起こることもあります。
電子化してバックアップを含めた適切なデータ管理を行えば、こうしたリスクを軽減できます。
ただし、電子化すれば自動的に安全になるわけではありません。
バックアップやアクセス権限、最新版の管理など、電子データに適した管理方法を整えることが重要です。
5.電子化の費用だけで判断しない
図面電子化には、当然ながらスキャン費用などの初期コストが発生します。
さらに、電子化後のデータを保存するためのサーバーやクラウド、管理システムなどが必要になる場合もあります。
そのため、
電子化費用 + 電子化後の管理費
と、
保管費削減 + 検索時間削減 + 共有作業削減 + その他の業務効率化
を比較します。
「電子化するといくらかかるか」だけではなく、「電子化しないことで毎年いくら発生しているか」を見ることがポイントです。
6.すべての図面を一度に電子化する必要はない
ROIを考えた結果、全量を一度に電子化することが難しい場合は、優先順位を付ける方法もあります。
例えば、
- 頻繁に利用する図面
- 保管スペースを圧迫している図面
- 劣化が進んでいる図面
- 改修工事で使用する図面
- 検索する機会が多い図面
などから電子化します。
特に「電子化した場合の効果が大きい図面」を先に対象にすることで、限られた予算でも電子化のメリットを得やすくなります。
7.電子化後の業務まで含めて効果を考える
ROIを考えるときは、スキャン作業そのものだけでなく、電子化後にどのような業務が変わるかまで考えましょう。
例えば、
紙図面を探す
→ 電子データを検索する
図面をコピーして共有する
→ 適切な共有環境でデータを確認する
倉庫から図面を取り出す
→ パソコンやタブレットで確認する
というように、日常業務そのものが変わる可能性があります。
電子化は「紙をデータに変える作業」ではなく、図面を探す・見る・共有するという業務を効率化する取り組みとして考えることが重要です。
まとめ
図面電子化のROIを考えるときは、電子化費用だけを見るのではなく、電子化によって削減できるコストや業務時間まで含めて考えることが大切です。
特に確認したいのは、
- 図面の保管スペース・保管費
- 図面を探すための時間
- コピーや共有にかかる作業
- 図面の劣化・紛失によるリスク
- 電子化後の業務効率化
などです。
まずは「図面を探すのに1回何分かかっているか」「年間で何回発生しているか」「図面の保管にどの程度のスペースや費用を使っているか」を調べてみましょう。
こうした数字を整理すると、図面電子化にいくら投資し、どの程度の効果を期待できるのかを具体的に判断しやすくなります。
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